進学校を卒業し大学に進むも中退、エリート街道からイチ抜けて新宿歌舞伎町のホストクラブ入り。それまでのおとなしい人たちに囲まれた暮らしから一変、不良の吹き溜まりのような集団に激しく揉まれながらも入店一年でNo.1に君臨し、26歳で独立しホストクラブを経営、その後、バーや飲食店など10数軒を構える「Smappa!Group」の会長に就任。最近では介護事業に乗り出すなど常に話題が絶えない実業家として注目されている、手塚マキ氏。



女たちがホストに求めるものはなにか、そして女がより自由に強く生きるにはどんな心持ちでいるべきか? 色々と伺いました。

――手塚さんはホストの現役を離れてもうどのくらいになるのですか?
手塚マキ(以下、手塚)「10年くらいですかね。10年前とはホストが変わったというより世の中が変わった。まずホスト業界の裾野が大きく広がりました。僕らの時代は接客が優秀で女性を喜ばせたり会話の受け答えが上手だったりが絶対条件だったけど、今はそれに加えてSNSでのフォロワー数が多かったり、そのフォロワー数を上げることが売上に繋がったりしていますね」

――裾野が広がったというのはどういうことですか?
手塚「日本中から歌舞伎町を目指してお客様が来るようになった。まるでアイドルに会いに来るかのように」

――ということは、歌舞伎町は活気に湧いてるんですか?
手塚「そうですね、ここ2、3年はバブル状態ですね。もともとすごい狭いマーケットだったのが、どんどんお客様の層も広がり、僕も歌舞伎町歴は20年以上ですが、今がピークだと思います。今はどこの店も人手不足ですよ」



――女性たちはホストに何を求めにやって来るのでしょうか。
手塚「何を求めて来てるかは正直わからないです。例えば女性がその担当ホストのことを好きだから来ているっていうのは、その子自身が思っているかもしれないけど、それだけの理由ではないと思うんです。いろんな複雑な事情があって生きていて、その中のふとした隙間で来てくれているのだろうと」



――手塚さんご自身はどんなお気持ちで女性客に接していましたか?
手塚「僕自身で言えば女性の気持ちにどうしたら寄り添えるか、懸命に考え、勉強してきたつもりです。それができなければ、ここでは生き残れなかったと思っています。女性を口説くというより好かれる男でいようと意識していました」

――実は最近、ふらりとホストクラブに来る機会があって。なんというか入れ替わり立ち替わり若い男が座って、正直、その魅力がよくわからなくて。

手塚「まあ、1回行って面白いって場でもないと思いますよ」

――でも、その2回目以降、行く気持ちってどんなものなのかなと。なんともない話で時間を繋ぎ、後にも残らないような軽い時間をやり過ごす感があって…。

手塚「その通りですよ。なんとなく時間を繋ぎたい時、どうにもモヤモヤするとか、やりきれないだとか。そんな時間をどうやり過ごすか。例えばテレビを見たり友達と電話したりでやり過ごすなか、その手段のひとつに、なんとなく誰かに聞いてほしい、人の温もりを感じたい。そんな時に利用するのがホストクラブ。軽い時間と仰ってましたが、まさにその軽薄の美徳を提供する場だといえます」

――あー、確かに。軽いなー、まあこんな気軽な時間もいいのかなという気持ちにはなれるかもしれません。

手塚「そうですね、ホストクラブはハレの場なんです。友達にも彼氏にも、ましてや家族にすら言えないことを言って解放されたりする場です。ホストはお客様に「こんなに気楽に生きてるヤツもいるんだ」って感情を与え、フッとお客様自身も少し軽くなれるような存在であるといいなと思っています。それに、世の中にあふれている、女性らしくとか女性としてみたいな役割から解放される場所がホストクラブなのだと」

――なるほど。男らしくよりも女らしくというのは未だ根強くこの社会にある気がして、それが女性を生きづらくさせていますよね。
手塚「やはりまだ社会が男女差別にあふれ、社会のあらゆる場面で女性は男性を支える存在であることを強いられているからでしょうね。それに男性が気が利かなくても“しょうがねーな”で済まされても、女性が気が利かないとモテるモテないだの婚期だのにまで影響しますよね。電車内にいる変な奴ってだいたい男だし、街歩いてておかしな奴もだいたい男。女性はバカな発言とか行動とかしないように、刷り込まれ育てられてきているんだなあと感じますもん」



――女性の性欲についても、未だなきものにされているというか、女性が性欲があるなんてはしたない的な刷り込みはありますよね。
手塚「そんなの、戦前じゃないんだからって話ですよね。男も女も性欲はあって当然だし、その逆でなくたってどっちでもいい。そんなのは個人の自由で、人との違いを気にしすぎなんじゃないかって思いますね」

――どうしても秘められたことだからこそ違いが気になっちゃうというか。
手塚「そう。秘められたことこそ違いがあるから面白い。例えばね、僕は高校生まで足の裏を洗ったことがなかったんです。で、友達が足の裏を同じタオルで洗っているのを見て“汚ぇえな”と思ったんですよ。それだけプライベートな場所ってそれぞれ違いがあると思うんですよ。自分にとっての当たり前が、人にとっては当たり前じゃなかったり。秘められた私的な空間の自分だけの楽しみって、絶対に必要なんですよ。女性だってそんな空間を持つことに後ろめたさを感じる必要はないと思います」

――でもまあ、なかなか女性の性欲のことは言いづらい感じはありますよね。
手塚「つい先日、銀座ですごく流行ってるクラブに遊びに行った時、そこの美人なオネエさんが“今日はウーマナイザー使ってスッキリして来たのよ”なんてサラリと言うわけですよ。僕はそれを知らなくて “それ何?”と聞いたら、“クリトリス吸引機よ、いま流行っているの。銀座の子はみんな持ってるわよ”って言うわけですよ。カッコいいなーと思いましたよ」

――銀座の女性も嗜まれているとは心強い話です。でも、男性のオナニー話は笑いになっても女性のオナニー話はまだ笑いに達せないというか。
手塚「オナニー話で笑い取らなくていいでしょうよ、べつに(笑)。男がオナニー話とかエロ話をして盛り上がるのは馬鹿だからであって、女性も同じ土俵に立って馬鹿になる必要なんてない。男が風俗行ったりAVを見て楽しむのと同じように、女性だって私的な空間を求め、ホストだなんだと開放感を楽しんだっていいんじゃないかと。そのうちのひとつがオナニーであればいいわけで」

――男女ともに私的な空間は持つべきだと。
手塚「そう。とくに女性は私的な空間でさえ閉じこもっていなきゃいけないと思わされてるじゃないですか。誰も見てないところでさえお淑やかにしなきゃいけないとか。男女の違いは生物学的にあるくらいで。セクシャリティとして自分の性別を楽しめばいいだけだと思いますね」



――手塚さん自身はどんな女性に惹かれますか?
手塚「臆さない女性ですね。男にも臆さず媚びも売らない。媚び売ってそこに踏ん反り返ってる男も見ててムカつくし、そういう男女が増えるのもムカつきます(笑)。今って、恋愛も家族のカタチも何でもアリじゃないですか。彼女や妻の役割を演じていたら幸せが約束されるという時代じゃない。だからこそ、男がそれを引き出さずとも自ら主体的に生きる女性に惹かれますね」

――歌舞伎町に書店「歌舞伎町ブックセンター」を開くなどしてホストに品性や教養をと声をあげてきた手塚さん。今後、ホスト業界はどう変わりますか?
手塚「売り上げによる歩合制やランキング争いで一晩で数百万が動く世界なわけですが、もっとなだらかな給与システムにして最低時給や月給を上げてホストたちの収入を安定させたい。それに歌舞伎町って、お酒の味には無頓着でどんな高いお酒も記号でしかない。美味しいドンペリニヨンやロマネコンティを楽しむ場になれば、もっと良いホストが増えるし、お客様も増えると思います」

――バーや美容室など様々な店舗を持ち、昨年12月にはホストをスタッフとして起用した介護事業を始められていますが、こちらは順調なのですか?
手塚「いえ、まったく(笑)。毎月100万ほどの赤字なので、早稲田の店舗は閉鎖し歌舞伎町に移転し今の事務所に併設させようと考えています。特に高齢者向けのこの手のサービスは大手にお願いする安心感という風潮があり、認知度を広めるためにも1店舗あるだけではダメで少なくとも3店舗ないと成り立たない。でも1店舗目で挫けちゃったので、方向性を変えないといけないなと」

――大手にも勝る手塚さんの介護事業ならではのメリットがあったわけでは?
手塚「個人プログラムをしっかり組んでその人それぞれにサービスするっていう、当事者により良い介護事業を始めたかったんですが、まず利用者が集められず、参考事例も作れなくて。なので歌舞伎町に移転し再出発ですね」

――今後、何かまた新しい事業などもお考えなのですか?
手塚「とりあえずいろいろと手を伸ばしすぎてしまったので、いろいろ整理したいですね。一つ一つの事業をちゃんと儲けるようにしたい。やってみたい新しい事業でいえば、いくらでもありますけどね。それこそ、女性向けラブグッズだって作ってみたいって思いますよ」

“みんなもっといろんな欲に忠実になって、素直になっていい”と手塚さん。素直であるとは、等身大の自分であることを大切にすること。

夏目漱石の「こころ」など、数々の名著を手塚氏なりの解釈で書評する最新書『裏・読書』(ハフポストブックス)で、こんな素敵な言葉を仰っていました。

村上春樹『ノルウェイの森』で主人公ワタナベの軽やかすぎる受け身スタンスをモテ男の源、これぞ一流ホストと評する手塚氏が、その書評を最後このような言葉で締めているのです。

――僕は、もっと女性が主導権を握る会話を日本社会で増やしたい。女性があれこれ工夫して、男性を“落とす”のが当たり前になったら、女性はもう新しい人種と呼んでもいいぐらい、別の行き方を手に入れると思います。
 不必要に「にっこり」笑顔を振りまくこともないでしょう。好きな人にだけ、勝負の瞬間だけに、その表情は取っておく。そんな“ネオ・ウーマン”がいきいきと活躍する社会になったとき、ワタナベの回りくどいセリフをまた、一つ一つ噛みしめて読みたい。――



OMGはオトナの女性、まさにネオ・ウーマンの欲望を満たす場として今後も存続できるよう、日々邁進していきます!


手塚マキ
1977年9月20日生まれ。
埼玉県出身。
歌舞伎町振興組合執行役員常任理事、ホストのボランティア団体「夜鳥の界」リーダー。最新書は『裏・読書』(ハフポストブックス)。
近況はTwitter【@smappatekka


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