戦後間もない1947年に浅草に設立された、浅草の歴史上で外すことのできないストリップの殿堂、“浅草ロック座”。現存するストリップ劇場では最大手で最古参、全国各地で消えつつある劇場の中でも“浅草ロック座”といえば踊り子にとっては誰もが目指す聖地です。

ストリップは男性客が女性の裸を見に行くスケべな場所というイメージが強いかもしれません。たしかに実際ヌードがナマで見られる場ですが、浅草ロック座は本場キャバレーのようなゴージャスな衣装もあればアイドルのライブのようなポップな衣装など豊富な演出でミュージカルのような物語性があります。そしてとても官能的で感情的な展開で女性が裸になるシーンに繋がるため、ただのスケべではない刺激や衝撃を受けること必至なのです。

また、昨今はAV女優がAVに出演する傍らストリップデビューすることも多く、女性ファンの多いAV女優が舞台に上がる時などは女性の単体客や2、3人で連れ立って来る客なども増えているそうです。

そんな中、今回ご登場いただくのは、2015年にメーカー専属女優としては珍しくストリップデビューに挑戦し、今年も5年連続で浅草ロック座に立つ女優、川上奈々美さん。今月7月1日から7月20日までの20日間100公演行われるシェイクスピアの“マクベス”や“真夏の夜の夢”などの作品を題材にし、様々な愛のカタチを表現した演目『Lovers』に挑戦しているのです。今回の演目の内容や踊り子としての1日などお伺いしました。



――今回で5年連続の浅草ロック座ということで、なぜまた舞台に立とうと?

川上奈々美(以下、川上)「私の中ではロック座に立つことは毎年恒例。まず年の頭に何月に立つか決めています。本当は浅草が一年で最も活気づく5月に立ちたいんですけど、他のスケジュールとの兼ね合いで今年は7月になりました」


――これまでの舞台では、初ストリップに挑戦した時は生歌披露、2回目挑戦時は当時最新技術だったプロジェクションマッピングを導入し幻想的な世界観を演出したりと年々新たな試みで楽しませてくれました。今回は何に挑戦を?

川上「今回はとても地味でパッとしない挑戦ですが、極限まで自分と向き合うことがテーマ。私が登場する7景(バックダンサー除く総勢7名の踊り子の単独ステージを1景、2景と数える。川上さんは7景で大トリ)の回転する小ステージで裸になる時、それまでの明るい曲から一変してどん底に落ち、這い上がって立ち上がる、およそ10分間ほどの演出です。毎回、自分の内面と向き合いながら脱ぐので、精神的にヘビーだし未だ迷走中です」




――なぜ今回はそのような演出にしたのですか?

川上「私の演目は「お気に召すまま」がテーマでヒッピー役なんです。原題は様々なカップルが生まれる恋愛劇ですが、私はただの恋愛に捉われず、掴んでは消え、掴んでは消える理想あるいは希望をイメージしました。私はこれまで、AVでも映画でも芝居の時は曝け出すことを最大の武器としてきました。決してグラマラスでもイマドキの顔立ちでもない私ができることは、包み隠さずありのままを見せることしかできなくて」




――確かに、打ちひしがれる川上さん、もがきながらも何かを掴もうとする、何度でも立ち上がろうとする川上さんの姿には震えるものがありました。

川上「とか言いつつも、私はロック座には一年に一度しか上がらないから、他の踊り子さんのように足が上がらないし踊りなれてもポーズの引き出しがあるわけでもない。足が上がらなくても、せめて伝えられることがあったらと」




――伝えたいとは、何を?

川上「ありきたりに聞こえるかもしれないけど、一人一人に可能性があるということを。最後、「Hallelujah(ハレルヤ)」を歌うんですが、これは絶対に歌いたかった。「And it’s not a cry that you hear at night (君が夜な夜な耳にするのは涙の音でなく)It’s not somebody who’s seen the light (光のほうを見続ける誰かでもない)It’s a cold and it’s a broken Hallelujah(冷たく歪んだハレルヤなんだ)」。ただ神を褒め称えよ的な意味ではない、悩み苦しみながらも可能性を見出すこともできる人生の希望を伝えたかった」



――川上さんも悩み苦しむことはあるのですね。

川上「身も心もコンプレックスの塊です。幼い頃から母に自分の容姿を肯定されたことがなくて。小さい顔もアンバランスでビーバーみたいな大きな前歯も好きじゃなかった。おまけにこの仕事を始めてからは揺れる胸がない(笑)。それに基本的にはマイナス思考で何か失敗するととことん自分を責めるし浮き沈みも激しいです。よく、容姿と中身のギャップがあるねと言われます」

――キュートな女性って容姿から想像つかないドロドロした感情を秘めてると。

川上「はい。ドロドロの底なし沼です。負けず嫌いだから、今回の演目を見たお客様から“まだ演技中は探りながらって感じだったかな?”とかって感想を聞くと、“クソッ!”って思うし(笑)、お友達が見に来てくれて、“可愛かったねー”ってだけ言われても“あー、何も感じなかったってことだな”って思うし(笑)」

――どんな感想を言われても考え込んでしまうわけですね。

川上「はい。“できた!”って実感が得られることなんて、そうないですよね」




――しかし20日間で100公演は凄まじいですが、一日の流れはどんな感じなのですか?

川上「11時半に劇場入りし、衣装確認後にメイクスタート。そしてストレッチをして1日の1回目の公演となる13時に備えます。私の出番は1景と2景、そして7景ですが、2景から7景までは40分間ほど休憩できるので、その間に軽く昼食を。あとは2回目公演の15時、3回目の17時、4回目の19時、5回目の21時と繰り返しですね。夕飯は劇場では食べず、楽屋に置枯れた軽食で繋ぎます。そして23時半過ぎに帰宅して夜食を食べ、ゆっくりとお風呂に入り3時から4時頃に寝て10時頃に起きる、という感じですね」


――20日間は遊ぶ時間はほぼないって感じですね!

川上「去年までは全く遊びませんでした。でも5年目にして息抜きも必要だと悟って。つい先日、息が詰まりそうになってたところにAV女優仲間のカミシオ(神咲詩織)が“ご飯作って待ってるよ”と誘ってくれて彼女の家に遊びに行きました。他愛もない話を朝4時くらいまでして。自分の言葉で会話をすることがこんなに発散になるのかぁって実感しました。劇場ではやっぱり自分を殺して過ごしてる時間の方が長いから」


――5年間、ストリップに立ち続ける川上さんから見て、浅草ロック座の魅力とは。

川上「色々ありすぎますけど、やはりロック座の踊り子さんとお客さんの生き様ですね。今の日本の男性って総じてロリ文化じゃないですか。でもロック座にはベテランの踊り子さんの中には40代の女性もいる。その女性は老いや身体の傷さえも晒け出し、お客様はそれら全てを受け止めてくれる。中にはストリップを見に来るためにお金を貯めて来てくれるような方もいるし、13時からの1回目公演から21時までの最終公演まで一日たっぷりお弁当を持って見に来てくれる方もいたりと、その全ての皆さんが生々しい人間そのもので、そんな人に少しでも元気をあげられているんだっていう達成感もかけがえのない魅力です」


――本当に、老いも若きも女性の体は美しい、と思える場所だとも思います。

川上「そう。そんな場所だからこそ、コンプレックスだらけの私も全てを晒け出せるんです。毎回吐きそうになるくらい緊張して、1日5公演、20日間を1日たりとも休まず続けて、私は一年に一回だからできるようなものの、これを毎月毎日繰り返す他のお姐さん(踊り子さん)のことを思うと、本当にすごいことだなと。私にはとてもできません」




――最後に。女性客にはどのように楽しんでほしいですか?

川上「女性が見たらショックに思うかもしれない。衣装や演出は凝ってはいるものの、いろんな女性が胸やお尻を曝け出し、生身の身体全てを使って演目の世界観を表現するので。日々ストイックに練習を重ねるどんな踊り子さんにもコンプレックスがあり、でもそのコンプレックスを諸共せずに晒す姿に何も感じない人はいないんだと思います。ショックとともに目が離せない魅力はあるのではないかと思いますね」


――今後の川上さんのストリップ以外の活動についても教えてください!

川上「AVは撮っていただける限り続けたいし演者として生きたい。8月8日から配信予定の、山田孝之さん主演のNetflixオリジナルドラマ『全裸監督』にも3、4話にゲスト出演させていただきました。その回の評判次第でその後のお話でも登場できるかもしれないので、皆さんにどんな評価をいただけるのか、楽しみです!」


Netflix全裸監督 予告編 ▶︎▶︎

浅草ロック座2019年7月公演『Lovers』、開催期間は7月1日から20日まで
浅草ロック座 ▶︎▶︎



川上奈々美
@nanamikawakami


(取材・文 河合 桃子)


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